「くり」は秋の味覚を代表する食べ物の一つ。表面がツヤツヤと光った大粒で、甘くてほっこりとしたくりの実が口いっぱいに広がると、何だか顔がほころびます。 
くりの樹全体がセピア色に染まる頃に収穫を迎えます。 |
県下のくり生産量は3,492トン(H15)で、茨城県についで全国第2位。「丹沢」、「筑波」、「銀寄(ぎんよせ)」、「利平」など、さまざまな品種が球磨地域を中心に県北などで盛んに栽培され、全国で最も早く市場に出荷しています。生食用だけでなく、くりきんとん等のお菓子の原料としても広く使用されている熊本のくり。傾斜地での収穫やせん定など、地道な努力と工夫が大粒で甘い熊本産のくりを育てています。 栄養価 食品成分(科学技術庁資源調査会編「五訂日本食品標準成分表」より引用 可食部100グラム当たり) 日本ぐり 生
・エネルギー |
164kcal |
・水 分 |
58.8g |
・蛋白質 |
2.8g |
・脂 質 |
0.5g |
・炭水化物 |
36.9g |
・灰 分 |
1.0g |
・カルシウム |
23mg |
・リ ン |
70mg |
・鉄 |
0.8mg |
・ナトリウム |
1mg |
・カリウム |
420mg |
・マグネシウム |
40mg |
・亜 鉛 |
0.5mg |
・銅 |
0.32mg |
・カロテン |
37μg |
・ビタミンB1 |
0.21mg |
・ビタミンB2 |
0.07mg |
・ナイアシン |
1.0mg |
・ビタミンC |
33mg |
・食物繊維 |
4.2g |
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注意:この成分値は、画面で紹介している農産物の分析値ではありません 生産の様子  |  |  | ◆剪定 12月~3月中旬にかけて剪定作業を行います。これはくり栽培のなかでも特に大切な仕事の一つで、安全に管理作業を行うだけでなく、毎年、大玉のくりを安定して収穫するためにも欠かすことができません。栽培農家の人たちは高いくりの樹を低く仕上げていきながら、太陽の光が樹全体に当たるよう枝を横へと広げていきます。樹の内側まで太陽が差し込み、風通しも良くなるので病害虫の発生を防ぐこともできます。「できればもう少し樹の高さを抑えたいけどなぁ」と話すある生産者。より低い樹は台風で枝が折れにくくなり、被害を最小限にとどめることができます。 | ◆開花 5月下旬~6月上旬の梅雨シーズンに、独特の香りをただよわせながらくりの小さな花が開花します。風媒(風が花粉を運ぶ)によって受粉するくりの場合、同じ品種で受粉すると花しか咲かず、くりの実は自然に落ちてしまいがち。そこである農家の人は畑の中に2列ごと、またはすぐ隣に違う品種のくりの樹を植えて、大粒で甘い実がたくさんなるよう工夫しています。 | ◆収穫 全国のトップを切って8月20日頃から収穫を始めます。生産者たちは早朝から専用のゴム手袋を両手にはめて赤く熟れ始めたイガを次々にコンテナに入れ、太陽が高くなる前にはその日の収穫を終了します。「くりが地面に落ちてからでは鮮度が落ちるけん、竹の棒で枝をたたきながら(くりを)落としていく」と話すある生産者は収穫後、一つひとつ丁寧に実をイガから取り出します。イガが硬くてむきにくい場合には水分を含ませ、しばらくゴザなどをかけておきます。そうするとイガがむきやすくなり、実を傷つけずに取り出すことができます。 |
生産の工夫  |  | ◆出荷調整 収穫したくりを自宅に持ち帰り、ムシ・ワレ・傷を取り出して近くのJA選果場に運びます。ここで裂果したくりや傷の入ったくりが混ざっていないか最初に検査を行い、コンベアー上をコロコロ転がりながらブラシで汚れやほこりを落として表面をきれいに仕上げます。そして形状選別機でサイズごとに分別されると10キロ箱に箱詰めされます。9月20日頃に出荷ピークを迎える県下のある選果場では、期間中に日量30トンを県内はじめ東京や大阪、名古屋などにトラック便で送り出します。初出荷の頃にはイガ付きのまま出荷することもあり、店頭に並べられたくりを子どもたちは興味深く眺めているとか。 | ◆草生栽培 県下のくり園ではイタリアンライグラスと言う草丈50センチほどの草が樹の下にびっしりと植えられています。梅雨時から夏場にかけて自然に枯れ、そのまま地面に倒れるので土の乾燥を防ぎ、その後は有機質の肥料にかわります。また、「敷きわらのように敷き詰められたイタリアンライグラスが収穫のときにくりを拾いやすくしている」(ある生産者)というメリットもあります。このようにイタリアンライグラスは園地を保護するだけでなく、雑草の抑制にも役立つスグレモノ。生産者たちは除草剤の散布をいっさい行わず、夏場に草の根元を少しだけ刈ります。 |
備考◎くりの種類 硬い殻に包まれた種子を食べる「くり」はナッツ類に分類されます。その種類は大きく分けて中国ぐり、ヨーロッパぐり、アメリカぐり、日本ぐりの4種類。その中で日本ぐりは最も大きく、早く実ると言われています。中国では7~8年たった樹でも収穫量はわずかなものですが、日本では「もも・くり3年、柿8年」と言われるように種をまいて育成した場合、収穫するまでに3年ほどしかかかりません。これは早くから日本で接ぎ木の技術が発達していたことが大きく影響しているのでしょう。また「甘栗」や「天津栗」としてよく街角で見かけるくりはすべて中国ぐりを使ったもの。日本のくりと異なり渋皮がポロリとむける特徴をもっています。 ◎くりの加工品 大粒で高品質の熊本産くりは糖度が高く、粉質のものが多くそろっているため、加工用として全国の和菓子・洋菓子店から高い人気を得ています。毎年、9月1日のくりきんとんの解禁日前になると、多くの菓子店から問い合せが相次ぎます。 ◆食品の栄養や機能性
くりの豆知識◎見分け方・選び方 表面にハリとツヤがあるもの、傷やカビ、穴がないものを選びましょう。また大粒で丸い形のくりをおすすめします。 ◎保存方法 ノコクズ(おがくず)に入れておくか、ポリ袋に入れて冷蔵庫で保管して下さい。 ◎食べ方 ゆでたり、焼いたりするほか、マロンケーキや羊かんなどのお菓子の素材としても幅広く楽しめます。また「くりの甘露煮やくりご飯を食べるのは好きだけど、渋皮を自分でむくのは…」という方におすすめのむき方をお教えしましょう。まず最初に大きな鍋にくりを入れて水からゆでて下さい。じっくりと煮るのではなく、沸騰して1、2分たったら火を止めてそのまましばらく冷めるまで待ちます。冷めたら水気を切って冷凍庫へ。凍りついたくりを解凍して皮をむくときれいに渋皮までむけますよ。少々時間はかかりますが、おいしいくりを食べるため一度試してみてはいかがですか。
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