多くの果実が年間を通じて出荷されるなか、夏の訪れを告げるびわはこの時期にしか食べられない季節感あふれる果物です。減農薬栽培で育てられた県内の大粒びわは鹿児島についで出荷時期が早く、4月下旬から全国に出荷されます。
大正末期~昭和初期にかけて天草で茂木びわの実生を育てたのが始まりと言われています。その後、生産者たちはびわの商品化に努め、栽培や販売の体制を強化。昭和40年代に単価的に大産地として有名な長崎県や鹿児島県を抜く実績をつくり、今日まで高品質のびわを全国に出荷しています。びわは寒さに弱いため、県下では冬でも温暖な天草地域を中心に栽培されています。3月中旬には甘くて、柔らかいハウスびわを熊本から全国に先駆けて送り出します。
栄養価 食品成分
(科学技術庁資源調査会編「五訂日本食品標準成分表」より引用 可食部100グラム当たり) びわ 生
・エネルギー |
40kcal |
・水 分 |
88.6g |
・蛋白質 |
0.3g |
・脂 質 |
0.1g |
・炭水化物 |
10.6g |
・灰 分 |
0.4g |
・カルシウム |
13mg |
・リ ン |
9mg |
・鉄 |
0.1mg |
・ナトリウム |
1mg |
・カリウム |
160mg |
・マグネシウム |
14mg |
・亜 鉛 |
0.2mg |
・銅 |
0.04mg |
・カロテン |
810μg |
・ビタミンB1 |
0.02mg |
・ビタミンB2 |
0.03mg |
・ナイアシン |
0.2mg |
・ビタミンC |
5mg |
・食物繊維 |
1.6g |
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注意:この成分値は、画面で紹介している農産物の分析値ではありません
生産の様子
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◆開花 「ビワの花咲く年の暮れ」と詠われるように、びわは独特の香り(におい)を漂わせながら、11、12月~1月の寒い時期に鈴のように小さい淡黄色の花をたくさん咲かせます。そのため花や蕾(つぼみ)が寒害の影響を受けることもあり、農家の人たちは蕾を摘んで開花時期を遅らせたり、花や蕾の付いている房をアルミ箔製袋でかぶせる等の対策をとっています。 | ◆袋かけ 1つの果房に傷のついていない健全な小さな実を2、3個残し、あとはすべて摘み取ります。養分の集中を図り、大粒の果実を育てるためです。その後、外観が美しい高品質のびわをつくるために新聞紙やクラフト紙ですべての果実に袋を掛け、備え付けの針金でしっかりと枝に結びつけます。これは気象災害の影響を最小限に抑え、鳥害や病害虫の発生を防ぐこともできます。袋の数は樹の大きさによって異なりますが、1本の樹に約200~300枚を使用します。 | ◆ 収穫 橙黄色の「びわ色」になってきたら収穫も間近。ハウスびわは3月下旬から市場に出回りますが、一般的には4月下旬~5月上旬にはじまり、5月中旬~5月下旬に収穫の最盛期を迎えます。生産者たちは1粒30~40グラムに生長したびわを傷つけないよう慎重に果実のついた枝を折ってハサミで切り離したあと、袋つきのままコンテナへ。自宅で袋をはぎながら規格ごとに箱詰めを行い、近くの共同集荷場へ運びます。県下では生産量のほとんどが天草地域で栽培されています。 |
生産の工夫
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◆低木栽 背の高い樹に袋かけを行うことは高齢化するびわ生産者たちにとって負担となり、危険も伴います。そこで比較的若い樹を低くて横に広がった樹に育てることで、作業の効率アップや安全性の確保に努めています。古い樹が多い天草地域では、現在までの実施面積が15パーセントほどですが、この取り組みは確実に進められています。 | ◆出荷 共同集荷場に運ばれ、色付き・形・傷などの細かい検査に合格したびわは、低温トラックで主に関東方面に向けて送り出されます。「とってもデリケートな果物なので出荷まで傷が入らないよう十分に注意します」と話すJA職員。 | ◆ハウス栽培 11月~1月の寒い時期に花を咲かせるので、小さな実をつけたびわが寒さで凍死することがあります。そこで県下では寒害対策として、また労力の分配や生産の安定化を図るためにハウス栽培を導入しています。 |
備考
◎びわ生産が盛んな天草地域。なかでも県内一の生産を誇る五和町の鬼池港近くには、びわの記念碑があります。これは昭和50年に生産額1億円を達成した際に建てられたものです。
◆食品の栄養や機能性
びわの豆知識
◎見分け方・選び方
全体的にハリがある、ふっくらとしたびわが良いでしょう。また、表面の「うぶ気」があまり取れていないものがおいしいびわのサインです。
◎保存方法
ほかの果物のように追熟して甘みが増すというものではないので、購入したらできるだけ新鮮なうちに食べましょう。
◎食べ方
旬の時期だけしか手に入らない貴重な果物ですが、せっかく購入しても「食べ方が分からない」というケースがあるようです。まず、あまり冷やし過ぎないことを覚えておきましょう。びわの甘さを引き立たせるためには、食べる1時間ほど前に冷蔵庫に入れておくこと。むき方はヘソ(果頂部)からヘタ(果梗枝)に向かって皮を手でむいていきます。(当たり前のことですが、びわは柔らかいのでナイフは使わないで下さいね。) そしてガブリと豪快にどうぞ。芳醇な味が口のなかいっぱいに広がります。「きちんと袋をかけて栽培してるし、出荷の時もほとんど果実には触れていないので、あんまりゴシゴシ洗わんでいいよ。洗い過ぎるは痛みのもと」とは生産者からのアドバイスです。
◎名前の由来
「びわ」は中国名の「枇杷(ひわ)」を音読みしたもの、また葉っぱの形が楽器の「琵琶(びわ)」に似ていることから、その名が付いたと言われています。