作物が健全に生育するためには、光や温度、空気・炭酸ガス(二酸化炭素、CO2)、水および養分の十分な供給が必要です。これらのうち水と養分は根から吸収されます。このような役目を持った根が順調に伸長するためには、土が根の住みやすい場所を提供する必要があります。野菜栽培では、生育に必要な養分を水に溶かして与える「養液(水耕)栽培」もありますが、一般的には「土」を利用した栽培です。「土」の大切さは今も昔も変わりません。
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【図1】健全な作物は健全な土に育つ 【図2】地力とは体力みたいな総合的な力
1)温度
野菜づくりにおける「土」の役割にはいろいろありますが主な機能に次のようなものがあります。(1)養分の貯蔵と供給 (2)水や空気の貯蔵と供給 (3)根の生育のために、良い環境をつくること等です。 これらの機能は別々のものではなく、一体的で総合的に働くものです。土は、野菜の生育に必要な水や養分を供給するほか根を張ることで株を固定する役割を果たしています。 そこで、土には根が深く、広く張り干ばつで雨が降らないときや逆に雨が降り続くときでも、根が元気で十分活躍できるように排水性(水はけ)や保水性(水保ち)、通気性、保肥力(肥保ち)がよくて、作土の厚さ(深さ)が厚く、病害虫がいないこと等の条件が求められます。
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 【図3】連作障害を引き起こす要因
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●養分の保持、供給
土は、石英や長石のような鉱物や粘土などの無機物と腐植等の有機物に分けられます。粘土にはいくつかの種類がありますが腐植とともに養分(肥料)の保持や放出に重要な役割を果たしています。粘土と腐植でできた土のコロイドがマイナスの電気を帯びた手を持っていて、プラスの電気を帯びた多くの養分と結びついています。この養分を保持する力を、塩基置換容量といい粘土が多くて腐植が多いほど高くなり、化学性の面では肥えた土壌といえます。砂土は低く、肥料を施してもすぐに流れてしまいます。そこで、有機物を施用するなどして土壌を改善する必要があります。
●水や空気の保持

【図5】作物にとって理想的な三相分布 
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土壌は、固体、液体、気体の占める部分に分けることができます。それぞれ固相、液相、気相といい、この割合を表すのに三相分布と言う言葉があります。
固相は、土壌そのもので液相や気相は土壌の隙間(孔隙)です。多くの野菜は酸素の要求量が多いので、土壌の通気性や透水性(水はけ)が悪いと根の活動が弱まり、あまり悪化すると根腐れを起こしてしまいます。
保水力(水保ち)は、この孔隙の量、大きさによって変わります。図に示すような団粒構造で孔隙量の多い土ほど良い土だといえます。土壌の粒子がそのまま集まった単粒子構造の土では正常に生育できません。
小さな土塊が集まった、団粒構造の土づくりが大切です。有機物などの堆肥を多く施し、良く耕して土壌を柔らかくすることが重要です。
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2)土の種類
土(土壌)の種類には、阿蘇山の噴火に伴う火山灰土(黒ボク土)や河川によってできた沖積土壌あるいは砂質土、粘質土などがあります。
火山灰土は、腐植(有機物)に富み、軽くて通気性もよいのですが、腐植は鉄やアルミニウムと結びついていてリン酸を固定する力が強く、酸性も強いことで知られています。そこで、火山灰土では酸度を調べ、酸性の場合は石灰を施して改善し、リン酸肥料も多く施用しなければ野菜は良く育ちません。
「ようりん」は酸性を改善し、固定を受けにくいリン酸を供給するので火山灰土壌の改善に最適です。
土の分類を土を形成する物質を粒子の大きさ(れき2mm以上、砂2mm~0,02mm、シルト0.02~0,002mm、粘土0,002mm以下)によって、埴土(粘質土)、壌土、砂壌土、砂土、れき土に区分することができます。
埴土(粘質) |
肥沃ですが、排水や通気性が良くありません。有機物を多く施す等して土を膨軟にして改善します。 |
壌土 |
肥沃で排水、通気性が良く野菜づくりに適しています。 |
砂壌土 |
砂土と壌土の中間ぐらいの性質で、野菜の生育も良く収量も望めます。 |
砂土 |
排水が良く、地温も高まり野菜の生育は促進されますが、肥保ちの悪さが問題です。 有機物を多く施す等して土を改善します。 |
【表1】土性の見分け方と性質
型組成(土性) |
乾燥した自然状態での外観およびそれを掌でこすったときの外観 |
ナイフによる切断面の表面 |
自然状態での物理性 |
こねてころがす試験 |
乾燥 |
湿潤 |
埴土 |
粘質で均質、密な塊(粉末) |
なめらかで光沢がある |
固く連結した塊、固い団塊あるいは固い構造 |
粘着性、可塑性のある塊 |
ころがしてひもになる(太さ2mm以下)、曲げれば輪になる |
壌土 |
粘土の多い不均質な塊 |
平らであるが光沢がない |
構造をつくるが固くない |
可塑性の弱い塊 |
もっと太いひもにしかならず、曲げるとこわれる |
砂壌土 |
砂が多く粘土はわずかに混ざっている |
表面に出ている砂でざらざらしている |
塊は固くない |
非常に可塑性の強い塊 |
ころがしてもひもにならず、ただざらざらした表面の小球に固まる |
砂土 |
まったく砂からなる |
表面に出ている砂でざらざらしている |
細粒質で連結していない |
可塑性を示さない |
ころがすことができず、固まらない |
礫土 |
細土と混ざった礫からなる |
礫を取り去れば、残りの部分は上記のいずれかの性質を示す。 |
野外で粒型組織を調べるときは、あらかじめ測定してある土を材料にして、水に濡らして指にはさんでこすり、指におぼえさせておくのがよい。
【表2】土壌適応性の事例
事例 |
砂 質 土 |
粘 質 土 |
ハクサイ |
早期出荷に適するが、病害、寒害に弱い |
病害、寒害に強く、抽苔遅く、晩期出荷に適す |
冬ダイコン |
寒に弱く、す入り早く、抽苔早い |
寒に強く、す入り遅く、晩出しができる |
ゴボウ |
根身美大であるが、外皮老化し、す入り早く、香気少ない |
肌粗く、す入り遅く、肉質ち密で香り高いが、根形不整である |
秋ジャガイモ |
草勢弱く、病害、寒害に弱く、収量が少ない |
草勢旺盛、病害、寒害に耐え、収量多く、肉質しまって貯蔵に耐える |
タマネギ |
早生扁平美大であるが、しまり悪く、皮薄く、貯蔵性は弱い |
腰高小球で、皮厚く、貯蔵性強いが、収穫は遅れる |
ニンニク |
玉しまり悪く、外皮薄く、病害多い |
球肥大よく、しまり、外皮厚く、病害に耐え、貯蔵性が高い |
スイカ |
早生美大であるが、肉質柔軟、病害の発生が多い |
生小球となるが、肉質しまって、品質優れる |
イチゴ |
早生大果となるが、肉質柔軟で、日もちが悪い |
熟小果となるが、肉質硬い |
3)作物の生育と養分
作物は、土壌中に伸ばした根から養水分を吸収して生長します。そこで、100gの作物を乾燥させ水分をとばすと25g程度になります(この時減った75gは水分)。次に、この乾いた作物を燃やすと有機物を構成する炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)は燃えてしまい1.5g程の灰が残ります。残った1.5gの灰(灰分)の中に、カリ(K)、カルシウム(Ca、石灰)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、硫黄(S)、 塩素(Cl)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ホウ素(B)、モリブデン(Mo)など作物の生育に必要な養分が含まれています。
作物は生長して花や実をつけますが、そのためには前述のような多くの種類の養分が必要です。中でも『肥料の三要素』と呼ばれる窒素・りん酸・カリは最も重要で、吸収量も多いため肥料(元肥や追肥)として施用します。
三要素に次いで、重要な成分にカルシウム(石灰)、マグネシウム、硫黄があります。また、植物の生育に微量ではあるが欠かすことが出来ない成分を微量要素といい鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、モリブデン、硫黄、塩素等があります。
微量要素は必要な量が少なく、多くなり過ぎると過剰症も出ますので、連用には注意が必要です。
4)肥料の種類
●肥料の効果の現われ方によって、速効性肥料と緩効性肥料に分かれます
速効性肥料 |
:施肥(肥料を与えること)するとすぐに吸収されて施肥の効果が現れますが長続きしません。追肥やお礼肥などとして使います。 |
緩効性肥料 |
:肥料の効き方が施肥後通常2~3か月、長いものは半年以上とゆっくりと効きめが続きます。元肥や追肥として使います。
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●肥料は、原料の種類によって有機質肥料と無機質肥料(化学肥料)に分かれます。
化成肥料には、3要素のうち1種類だけを含んだ単肥(例:硫安(N)、過リン酸石灰(P)硫酸カリ(K))や肥料袋に「N:P:K=8:8:8」のように含有量が表示されている3要素が含まれる複合肥料があります。
<有機質肥料>
油かす・骨粉・魚かす・鶏ふんなど、動植物質を原料とした肥料です。天然物のため一般に成分の含量は低く、土中の微生物によって分解されてから効くため、ゆっくりと長く効く緩効性です。また、三要素以外にも微量要素など、様々な有用成分を含み、地力を高める働きがあります。
<無機質肥料>
尿素・過リン酸石灰・硫酸カリなど、鉱物や石油などを化学的に反応させてつくった肥料で、化学肥料ともいいます。一般に速効性で、三要素のうち不足する成分だけを単独で与えることもできます。家庭園芸では、成分が急激に溶け出さないよう加工した緩効性のものが多く使われます。
<複合肥料>
有機質肥料や無機質肥料を原料として作られた肥料で、『配合肥料』、『家庭園芸用複合肥料』、『化成肥料』などとして販売されています。
<配合肥料>
一般的に有機質と無機質肥料を配合したものです。『家庭園芸用複合肥料』や『化成肥料』には、固体、液体、錠剤、スティック状など多くの種類があり、即効性や緩効性など効き方もさまざまです。いずれも三要素を含み、目的ごとに多くの製品があります。
<成分表示の数字と意味>
例えば『5-10-5』と表示されていた場合、窒素・りん酸・カリの三要素がそれぞれの順に、製品100gの中に5g・10g・5g含まれていることをあらわしています。
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5)肥料の施し方
石灰などのアルカリ性肥料は、堆肥等と合わせてタネまき(播種)や定植の1週間くらい前に施用し、土とよく混ぜておきます。リン酸、カリは元肥中心に施用し、播種3日くらい前に施します。
窒素は、元肥と追肥に分けてつかいます。元肥と追肥の割合は、生育期間の短い野菜では1:1、長いもの(トマト、ナス、キュウリ等)では追肥を多くします。この時、1回当たりの施肥量を少なくして回数を増やすことが大切です。また、栽培期間の長い作物用に、肥効を調節した肥料も販売されています。
窒素は、リン酸やカリと同様に播種3日くらい前に施して、肥料が直接タネや苗の根に触れないように土とよく混ぜておきます。
6)野菜の好適土壌酸度(ペーハー、pH)
石灰などのアルカリ性肥料は、堆肥等と合わせてタネまき(播種)や定植の1週間くらい前に施用し、土とよく混ぜておきます。リン酸、カリは元肥中心に施用し、播種3日くらい前に施します。
窒素は、元肥と追肥に分けてつかいます。元肥と追肥の割合は、生育期間の短い野菜では1:1、長いもの(トマト、ナス、キュウリ等)では追肥を多くします。この時、1回当たりの施肥量を少なくして回数を増やすことが大切です。また、栽培期間の長い作物用に、肥効を調節した肥料も販売されています。
窒素は、リン酸やカリと同様に播種3日くらい前に施して、肥料が直接タネや苗の根に触れないように土とよく混ぜておきます。
区分 | 適当なPH | 適する野菜の種類 |
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中酸性の土によく育つもの | 5.5~6.5 | ジャガイモ、スイカ、サツマイモ |
弱酸性の土によく育つもの | 5.5~6.5 | ダイコン、ラディッシュ、ヤマノイモ、トウモロコシ、カボチャ、ナス、シロウリ、トマト、キュウリ |
やや酸性の土でも育つもの | 5.5~7.0 | コマツナ、タイサイ、山東ハクサイ、ハクサイ、フダンソウ、シュンギク |
やや酸性の土でも育つもの | 6.0~7.5 | エンドウ、ネギ、アスパラガス、セロリ、カリフラワー、芽キャベツ |
酸性の土に弱いもの | 6.5~8.0 | ホウレンソウ、レタス |
【図7】土の酸性の程度と野菜に適したPHの範囲