
野菜が正常に生育するためには、光、温度、水、養分(肥料分)が必要です。ここでは温度と光について述べます。
1)温度
野菜には、それぞれ生育に適した温度があります(表9)。 野菜の収穫期間を長くするために、高温性の野菜ではトンネルやハウス等を利用して保温や加温することにより不足する温度を補います。夏の暑さに弱いものは、寒冷紗等で遮光して温度が上がるのを防ぐことにより生育を安定させます。 |
●高温性野菜 |
暑さに強く高温性で、春から秋にかけて栽培できます。ウリ類、ナス類、豆類などの果実を収穫するものや、さつまいもやさといも等の塊根類、中国野菜などで夏野菜とも言われます。しかし、盛夏は暑すぎて栽培しにくいものが多くあります。 |
●低温性野菜 |
涼しい気候に適し、葉や根を収穫するもが多く春と秋に栽培されます。 |
●耐寒性野菜 |
低温性野菜の中で特に寒さに強いもので、ネギ類、ホウレンソウ、ツケナ類などがあります。秋蒔きして越冬させて、冬から春に収穫するものがあります。 |
<地温> |
野菜の地上部の生育を良くするには、根を広く深く張らせなければなりません。そのためには、根の生育に適した地温を確保する必要があります。特に、果菜類やハウス栽培では重要で、マルチ栽培と合わせて行います。ハウス栽培での保温目標や限界温度は<表10,11>のとおりです。地温は果菜類で15℃以上、葉・根菜類では5℃以上が必要です。 | |

【図10】露地栽培での生育時期 【表9】野菜の温度適温性
低温性(10~18℃) |
温度適応 |
高温性(18~26℃) |
特に低温に強い |
低温に強い |
類別 |
高温に強い |
特に高温に強い |
エンドウ、ソラマメ |
|
マメ類 |
インゲン、ライマメ |
ササゲ、ナタマメ、エダマメ |
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ウリ類 |
キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ |
シロウリ、トウガン、ヘチマ、ニガウリ |
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|
ナス類 |
トマト |
ナス、ピーマン |
イチゴ |
|
雑果菜類 |
スイートコーン |
オクラ |
|
ジャガイモ |
塊根類 |
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カンショ、ヤマイモ、サトイモ、ショウガ、レンコン、クワイ |
ダイコン、カブ |
ニンジン、ビート |
直根類 |
ゴボウ |
|
ハクサイ、ツケナ、カラシナ、キャベツ、ブロッコリー |
ハナヤサイ |
菜類 |
ケール |
カイラン |
セリ |
|
香辛菜類 |
|
シソ、ミョウガ |
ホウレンソウ |
セルリー、レタス、パセリ、ミツバ、シュンギク |
柔菜類 |
フキ、ウド、アスパラガス |
ヒユナ、ツルムラサキ、エンサイ、マコモ、タケノコ |
ネギ、リーキ、ラッキョウ |
ワケギ、ニンニク |
ネギ類 |
|
ニラ |
【表10】果菜類の生育適温および限界温度(℃)
作物 |
昼気温 |
夜気温 |
地温 |
最高限界 |
適温 |
適温 |
最低限界 |
適温 |
最低限界 |
ナス科 |
トマト |
35 |
25~20 |
13~8 |
5 |
18~15 |
13 |
ナス |
35 |
28~23 |
18~13 |
10 |
20~18 |
13 |
ピーマン |
35 |
30~25 |
20~15 |
12 |
20~18 |
13 |
ウリ科 |
キュウリ |
35 |
28~23 |
15~10 |
8 |
20~18 |
13 |
スイカ |
35 |
28~23 |
18~13 |
10 |
20~18 |
13 |
温室メロン |
35 |
30~25 |
28~23 |
15 |
20~18 |
13 |
マクワ型メロン |
35 |
25~20 |
15~10 |
8 |
20~18 |
13 |
カボチャ |
35 |
25~20 |
15~10 |
8 |
18~15 |
13 |
イチゴ |
30 |
23~18 |
10~5 |
3 |
18~15 |
13 |
【表11】葉・根菜類の生育適温および限界温度(℃)
作物 |
気温 |
最高限界 |
適温 |
最低限界 |
ホウレンソウ |
25 |
20~15 |
8 |
ダイコン |
25 |
20~25 |
8 |
ハクサイ |
23 |
18~13 |
5 |
セルリー |
23 |
18~13 |
5 |
ミツバ |
25 |
20~15 |
8 |
シュンギク |
25 |
20~15 |
8 |
レタス |
25 |
20~15 |
8 |
【表12】野菜の高温障害
種類 |
高温障害を起こす温度と障害 |
トマト |
30℃以上で花粉の機能低下
35℃では同化作用よりも呼吸作用が大きく、炭水化物の消耗が大となる |
ナス |
30~32.5℃以上で花粉の機能低下 |
キュウリ |
30℃以上で花粉の機能低下 |
カボチャ |
35℃以上になると雌雄花の分化に異常をきたす |
インゲン |
30℃以上で花粉の機能低下 |
ハクサイ
キャベツ |
25℃以上で発育弱く、発病多い |
ジャガイモ |
21℃以上でイモの形成不良、29℃でイモの形成肥大がまったく行われない |
野菜が生育するためには、葉が太陽の光を受けて光合成を行い、その産物として炭水化物をたくさん作らなければなりません。そのため、光の強さが弱かったり、天候が悪くて光が当たらないと作物は栄養不足となって徒長して軟弱になったり、大きい果実や根、イモなどができなくなります。 一般に、多くの野菜はある程度までは光の強い方を好みますが、種類によっては強い光を好まないで、半日陰で栽培しなければならないものもあります。(表13) 弱光を好むものは、半日陰になるようなところに植えるか寒冷紗等で遮光して栽培します。 |
| 【表13】野菜の光適応性
光適応 |
野菜の種類 |
強光を必要 |
スイカ、トマト、ナス、ピーマン、サツマイモ、エンサイ、ササゲ、オクラ |
比較的強光を必要 |
キュウリ、カボチャ、メロン、ショウガ、サトイモ、ヤマイモ、カブ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ |
比較的弱光に耐えるもの |
イチゴ、菜類、ネギ類、ソラマメ、エンドウ、ハクサイ、キャベツ、サンショウ、ユリ |
弱光線を好むもの |
セリ、ミツバ、ワラビ、フキ、レタス、ミョウガ、キノコ類 |
暗所 |
マッシュルーム、軟白野菜(ウド、ミツバ、ミョウガ、ズイキイモ、アスパラガス、チコリー、モヤシ) |
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野菜の中で果菜類や豆類は花が咲いて実が成らないと意味がありませんが、逆に葉・根菜類ではタネを取る場合を除けば、花が咲いては困ります。 花芽分化を起こす要因により野菜を分類すると表6のうようになります。播種時期や苗の大きさ等に注意して栽培する必要があります。 | 【表14】花芽分化の要員による野菜の分類
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要 因 |
種 類 |
栄養 |
ナス、トマト、トウガラシ |
日長 |
長日 |
ホウレンソウ、タカナ、シュンギク、ハツカダイコン、ヤマゴボウ |
短日 |
キュウリ(雌花着生)、イチゴ、シソ |
温度 |
低温 |
苗の大きさに関係なく、種子から |
ダイコン、カブ、ハクサイ、タイサイ、サントウサイ、 キョウナ、エンドウ、ソラマメ |
一定の大きさになった中苗 |
キャベツ、ハナヤサイ、ブロッコリー、セルリー、ネギ、タマネギ、 ニンジン、ゴボウ、イチゴ |
高温 |
レタス、エダマメ、スイートコーン |
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